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連載『学ぶって たのしい。』篠田治美著

「勉強をするのは何のためか」
 これは、誰もが一度は抱く気持ちではないでしょうか。そして、もし聞かれたら即答に窮する、とても難しい質問ともいえましょう。
 この答えとして、著者は、「自らが自分の人生の主人公として生きていくためです」と記しています。
 「人生の主人公になる」とは、どういうことでしょうか?それについて著者は、以下のように説明しています。
 
 「自分らしい自分」100%になることが自分の人生の主人公になることです。「自分らしい自分」は「好み」に現れます。……自分の感性を信頼し、「好き」を極めましょう。
 とはいえ、「好きなんだから好き」では、他の人に伝わりません。……どこが、どのように「好き」なのかを探求します。……ほかの人の心に届くことばで語ることができるように……それには勉強です。
 
 つまり、「自分らしい自分」になるために勉強するのだと説かれています。
 本書の著者・篠田治美さんは、「半世紀近く」岐阜県下の高等学校で教鞭をとられてきた先生です。また平成17年からは、『岐阜新聞』に「中学生の広場」というコラムを連載。これまで17年間、約200篇を執筆してこられました。本書は、そのうち110篇を選び加筆修正、編集した「教育エッセイ」です。
 本書には、「それぞれ『自分らしい自分』の花を咲かせてい」る教え子たちのエピソードがたくさん綴られています。例えば、ホームセンターに勤めている「農学部出身の彼」のお話……。

 「会社に入ってから勉強することばかり。勉強しないとお客さんに対応できませんから。今は、世界史の勉強をしています」
 ホームセンター業務と世界史と、どんな関係があるのかしら、と不思議に思いました。
 「熱帯魚を担当することになったんです。3千種にもなる魚の学名は、ギリシャ語やラテン語なんですね。なぜだろうと調べていくと、歴史に関わるんです。あれもこれもと順番に調べていったら、いつのまにか歴史の勉強にたどりついてしまいました。ボクは学校時代より今の方がよく勉強しています……学校では、どうやったら疑問を解決に導けるか、その手法を学びました。問題解決の手法です」
 
 先生は、「生涯自分で学び続けることのできる力を養成すること」の大切さを説いています。

 日本を含むOECD(経済協力開発機構)加盟国が「Education2030」というプロジェクトを2015年に立ち上げました。これからの時代に必要な能力を育成するため……なぜ2030年か。そのとき世界は大きく変わっている、と想定するからです。今からほぼ10年後、……どんな能力が求められるのでしょう。……少なからず多くの職業が消え……今現在は存在しない職に就いている人も多いことでしょう。……求められているのは、……人間にしかできないことをする能力、……「あなた」しかできないことをする能力、です。
 
 本書は、「中学生を対象」に、「学ぶことの本質的なたのしさをお伝えしたい」という思いで書かれたものですが、すでに大人になってしまった私たちにとっても、これからの「学び」を模索するヒントがいっぱい詰まった、希少な「参考書」といえるのではないでしょうか。

『学ぶって たのしい。』
著者:篠田治美
発行:(株)岐阜新聞社
定価:1650円税込


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