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明治天皇の勅語から生まれた済生会とは

『皇室』バックナンバーより 第14回
令和8年1月30日
天然痘、ペスト、結核、マラリア……。人類は紀元前から種々の感染症と戦ってきた。
天然痘のように人類が根絶させた感染症もあるが、
令和2年春からの新型コロナウイルスの感染拡大からもわかるように、
感染症は今なお人類を脅かす大きな恐怖であり続けている。
戦後日本の未曽有の体験となったこのコロナ禍において、
皇室の方々は人々の健康と暮らしを案じられてきた。このご姿勢は古くから変わらない。
皇室がわが国の医療福祉の拡充に果たされてきた歴史を振り返る。
今回は済生会(さいせいかい)について紹介する。

(95号より)

済生会の歴史
(社福)恩賜財団済生会は明治44年(1911)、医療によって生活困窮者を救済するために明治天皇のご支援によって設立された。
 当時、日露戦争後の不況にあえいでいた日本では農村を中心にあまたの国民が貧困にあえいでいた。こうした世相を受け、明治44年2月11日、明治天皇は「生活苦で医療を受けることができずに困っている人たちに施薬(せやく)救療の道を講ずるように」と「済生勅語」(さいせいちょくご)を発し、お手元金150万円を下賜された。「済」は「すくう」、「生」は「いのち」を意味している。
 時の内閣総理大臣、桂太郎はすぐさま準備に取りかかり、同年5月30日、「恩賜財団済生会」が創立された。日本で最も古い恩賜財団である。初代総裁は伏見宮貞愛(さだなる)親王、会長には桂総理が就任した。
 済生会は設立直後から各地に診療所を設けたり、貧困所帯に無料の特別診療券を配布したりするなど、活発な事業を展開した。大正2年(1913)の神奈川県病院以降、病院も次々と開設。生活困窮者の生活支援活動にも当たった。



「恩賜財団」に込められた明治天皇の思い
 済生会ホームページによれば、桂総理は当初、天皇からいただいたという意味になる「恩賜財団済生会」として命名のおうかがいを立てた。ところが、明治天皇は「済生の事業は天皇と国民が一緒になって行うのだから、皇室だけが先行するような恩賜財団は適当ではない」とお許しにならなかった。そこで後日、「恩賜財団」の部分を小さく2行に分けて組み文字にし、目立たなくさせることでようやく許しを得た。
 第2次世界大戦後、恩賜財団は解散し、社会福祉法人として再スタートを切ったが、明治天皇の「済生」を国民全体の活動にしていきたいとのお志を決して忘れないようにと、正式名称を「社会福祉法人恩賜財団済生会」としている。
 現在、済生会は公的医療機関として指定されており、日本最大の社会福祉法人として全職員約6万4千人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開している。設立の趣旨に鑑み、今日でも低所得の患者に対して定額、または無料で診療を行っている。

なでしこ紋章の由来
 済生会の歴代総裁は皇族方が務めてこられてきた。初代総裁の伏見宮貞愛親王は明治45年(1912)、済生会の事業の精神を歌に詠まれた。

露にふす末野の小草いかにぞと あさ夕かかるわがこころかな
(野の果てで、露に打たれてしおれるナデシコのように、生活に困窮し、社会の片隅で病んで伏している人はいないだろうか、いつも気にかかってしかたがない)

 済生会では、親王が詠まれた精神を忘れないようにと、なでしこに露をあしらった「なでしこ紋章」を制定。大正元年以来、済生会の紋章としている。

「済生会の事業は極めて重要」
 歴代天皇も済生会の事業を支援してこられた。平成23年(2011)5月30日、創立100周年記念式典には当時総裁(第5代)をお務めの寬仁(ともひと)親王とご一緒に、上皇・上皇后両陛下と常陸宮・同妃両殿下がご臨席。上皇陛下は「困難な状況に置かれている人々を支えていく済生会の活動は極めて重要」とおことばを述べられた。
 上皇陛下は平成29年(2017)12月、仙台市の済生会乳児院にご下賜金を贈られている。同23年(2011)7月23日には、天皇陛下が山形県済生会の特養ながまち荘(山形市)をご訪問。東日本大震災で津波に遭い、避難していた女性らを見舞われた。



コロナ禍でのご支援
 現在は秋篠宮皇嗣殿下が総裁をお務めである。殿下は平成25年(2013)4月の第6代総裁就任以来、済生会の活動に積極的にかかわってこられた。
 初めての同会施設ご訪問は平成25年9月10日、東京都港区三田の済生会中央病院。通常の病室に加え、ホームレス用の処置室なども視察したほか、隣接する同附属乳児院の乳児室で子供を抱きかかえられる一幕もあった。
 翌26年(2014)10月、ご公務で訪れた愛媛県では巡回診療船再生丸をご視察。その後も各県の済生会施設を訪問し、令和2年(2020)5月、コロナ禍が始まると、済生会病院などの対応状況をご聴取。説明を受けられた後、職員と全国の医療従事者に向けてメッセージを送られた。また同月、感染症と戦う病院で役立ててほしいと、秋篠宮ご一家と宮内庁職員による手作りの医療用ガウンを贈られた。

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