読みもの

第22回「リバテープ」熊本弁
以前、このコラムで標準語のように見えて熊本でしか通用しない言葉について少し触れた。「後席(あとぜき)」や「直す」「離合(りごう)」などである。読んでない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明しておくと、「後席」は、開けたドアをきちんと閉めたり、席を立つ時、きちんと椅子をしまうことなど、そういった行儀作法について言う。また、「直す」は標準語通り「修理する」意味でも使うが、ゴミ箱に捨てたり、整理整頓することなどを言う。だから「このゴミば、直しといて」は「このゴミを捨てておいて」という意味なのである。また、「離合」は、狭い道路を車がすれ違うことを言う。つまり「合って離れて」という言葉の意味からの連想形と思われる。
そして、今回、このコラムを書くために、ネットで熊本弁のことを見ていて驚いたことがある。それが、今回の標題の「リバテープ」である。
これは、何あろう、絆創膏のことなのである。筆者は、これは「標準語」と思っていた。熊本で生活した年数より東京暮らしがはるかに長くなった今の今までである。
これは「バンドエイド」などと同じように絆創膏の商品名で、なおかつ熊本にあるリバテープ製薬株式会社が作っていたものだったのである。つまり、熊本では「リバテープ」が絆創膏としては一般的で、だからこそ、「絆創膏=リバテープ」という認識になってしまったのだろう。そう考えてみると、東京で「リバテープ持ってる?」と聞いて、怪訝な顔をされ、よく聞こえなかったのかと思い、「リバテープ」に加えて「絆創膏」と言った覚えがあることを思い出した。
他にもこのような言葉は多くある。例えば、熊本では「しょっぱい」とはほとんど言わない。それは「辛い」だ。それでは、わさびやからしの「辛い」はどう表現するかというと、やはり「辛い」である。熊本弁で言うと「からかー」だ。その差は、文脈で理解するしかない。
また、「寄りかかる」ともあまり言わない。それは「ねんかかる」だ。だから、クッションなどを所望する時は「なんかねんかかるもののはなかろか」(何か寄りかかるものはないでしょうか)になる。筆者は東京に来て、すぐの頃、「塩辛い」や「寄りかかる」をどう表現していいか迷ったことも思い出した。
「リバテープ」の驚きから、つらつらと書いてきたが、このような予想外の驚きを表現する言葉がある。
「とつけむにゃー!」
数年前の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」で熊本生まれのマラソンランナー役の中村勘九郎が、時折、叫んでいたあれである。
文/伊豆野 誠
前回は https//nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100785