読みもの
第25回「けつる」伊予弁きゃりーぱみゅぱみゅの大ヒット曲に「つけまつける」があります。「♪つけまつけま つけまつける ぱちぱち つけまつけて~」と、つけまつげをつけるあの歌です。私はこの曲名を初めて見た時(今もですが)、反射的に伊予弁の「けつまげる」を思いだしました。
この言葉、どういう意味だと思いますか? まず「けつ」が耳に飛び込んでくるので、「けつ」+「まげる」と思われがちですが、違います。お尻をどうこうするわけではありません。次のように使います。活用がいろいろありますが、
A:「痛っ!」
B:「どしたん?」
A:「そこの敷居でけつまげた」
A:「うわー寝坊した!行ってきます!」
B:「そんなに慌ててたら、けつまげるよ」
A:「昨日、可愛い靴買(こ)うたんよ」
B:「可愛いけど、ヒールが高いねえ。道でけつまげんようにね」あるいは「けつまげられんよ」
そうです、「けつまげる」は「つまずく」「転ぶ」という意味なんです。おそらく「蹴躓(けつまず)く」と似た言葉なんでしょうね。だから「けつまげる」も単に転ぶというよりも、「足に何かが引っかかってよろける」「つまずいて転ぶ」という意味合いが強いように思います。
ネットで調べたところ、「けつまげる」は遠く離れた青森県でも使われているようです。もしかすると「けつまげる」は「けつまずく」よりも古い言葉で、都から地方に伝播した後、都の方では「けつまずく」に取って代わられたのが、地方ではそのまま残ったのかもしれません。いずれにしても面白い響きの言葉です。
そういえば、伊予弁には「けつる」という言葉もあります。これは「蹴る」です。
「そこのボール、こっちにけつって」とか「前の席をけつったらいかん(蹴ってはいけません)」というふうに使います。「けつまげる」は今でも老若男女問わず使っていると思いますが、「けつる」は若い人はあまり使わないかもしれません。私も使った記憶がないのですが、響きがユーモラスですよね。残しておきたい方言です。
文/おかだなおこ
前回は https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100858