皇室WEB
第10回の記事で紹介したように、皇室とイギリス王室とのご交際の歴史は150年におよぶ。
第2回の今回は平成以降のご交際と皇族方の留学について紹介する。
(99号より)

平成の御代に友好関係が深化
平成の御代になると、皇室と王室の相互訪問はより活発となった。平成2年(1990)にはチャールズ3世国王陛下とダイアナ妃が即位礼ご参列のために再度ご訪日。同27年(2015)にはウィリアム皇太子殿下が来日された。
日本からは平成10、19、24年と上皇・上皇后両陛下がご訪英。
平成10年(1998)と19年(2007)のご訪英は上皇陛下の科学者としてのご足跡を称える目的もあり、同10年のご訪英では、上皇陛下が世界最古の科学学会、イギリス王立協会から「チャールズ2世メダル」を授与された。これは科学の進歩に顕著な貢献のあった「元首」に贈られるメダルで、上皇陛下が受賞第1号だった。同19年ご訪問時には、招待されたロンドン・リンネ協会主催のリンネ生誕300年記念行事において、英語で「リンネと日本の分類学」と題する基調講演をされた。
平成24年(2012)のご訪問は、エリザベス2世ご即位60年祝賀行事ご臨席のためだった。上皇・上皇后両陛下は世界中から集まった各王室の王族方と交流を温められた。
平成の御代では天皇陛下はじめ皇族方もたびたび訪英し、友好親善に努められた。
皇族の留学先としてのイギリス
イギリスは皇室の方々にとって明治時代から留学先ともなってきた。
明治14年(1881)、有栖川宮威仁(たけひと)親王がグリニッジ海軍大学校に海軍士官として留学。同17年には東伏見宮依仁(よりひと)親王が海軍兵学校を中退し、イギリス留学に出発する。
大正14年(1925)には秩父宮雍仁(やすひと)親王がオックスフォード大学モードリン・コリッジに留学し、帰国後は日本でラグビーやスキーを広めるなど「スポーツの宮様」としてスポーツ振興に尽力された。なお、秩父宮妃の勢津子妃は明治42年(1909)、外交官の父の赴任先であったロンドンでお生まれになっている。

戦後のご留学は寬仁(ともひと)親王から
寛仁親王は学習院大学ご卒業後の昭和43~45年(1968~70)、伯父の雍仁親王と同じオックスフォード大学モードリン・コレッジにご留学。その思い出を『トモさんのえげれす留学』として出版された。
天皇陛下は昭和58年(1983)から2年間、オックスフォード大学マートン・コレッジでテムズ川の水運史を研究された。オックスフォードでの日々は『テムズとともに―英国の二年間』として上梓され、学生寮での生活やイギリス王室の方々とのご交際はもちろん、ユーモラスな失敗談もつづられた内容は大きな話題となった。
秋篠宮皇嗣殿下(オックスフォード大学大学院)、彬子(あきこ)女王殿下(オックスフォード大学マートン・コレッジ)、承子(つぐこ)女王殿下(エディンバラ大学)、小室眞子さん(エディンバラ大学、リーズ大学)、佳子内親王殿下(リーズ大学)もイギリスで学ばれた。
彬子女王殿下は平成22年にオックスフォード大学より哲学博士号を授与されたが、皇族として博士号を取得されたのは秋篠宮殿下に次ぐ2人目、外国の大学からの授与は初めてでいらっしゃった。
また、ご留学ではないものの、愛子内親王殿下は平成30年(2018)、学習院女子高等化の海外研修プログラムに参加し、イートン校で英語教育を受けられた。
皇族としてではないが、皇后陛下は外務省勤務時代にオックスフォード大学べーリオール・コレッジに研修留学された。寬仁親王妃殿下は聖心女子学院中等科を経てロスリンハウス・コレッジへ入学・卒業された。また高円宮妃殿下はケンブリッジ大学で学ばれ、昭和54年に同大学より修士号を授与されている。
「皇室とイギリス王室―その1」はこちら
https://www.nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100670
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