皇室WEB
第14回の済生会、第15回の結核予防会、母子愛育会の記事で紹介したように、古来、皇室は人々の健康と暮らしを案じられてきた。
今回は赤十字とのかかわりについて紹介する。
(第95号より)
有栖川宮熾仁(たるひと)親王のご決断
赤十字は192の国と地域で活動する世界最大規模の人道機関である。その設立は1859年6月、イタリア統一戦争で悲惨な有様を目撃したスイス人のアンリ・デュナンが「人の命を尊重し、苦しみの中にいる者は、敵味方の区別なく救う」ことを提唱したことに始まる。
日本と赤十字の出会いは、1867年(慶応3年)のパリ万博である。元老院技官の佐野常民(つねたみ)が赤十字展示館を視察。明治10年(1877)、赤十字思想に基づく救護組織「博愛社」設立の趣意書を有栖川宮熾仁親王に提出したところ、親王はその場で博愛社の活動を許可。8月には皇室から1000円が下賜(かし)され、9月には博愛社初代総長に東伏見宮嘉彰(よしあき)親王が就任された。
歴代皇后が名誉総裁に就任
その後も皇室は博愛社の活動を支援し、明治16年には昭憲(しょうけん)皇太后により年金300円のご下賜が決定。このご下賜金は、時代に応じて金額を増やしながら昭和20年まで続けられた。
博愛社は明治20年に日本赤十字社と改称。世界で19番目の赤十字社であった。
昭和22年には新定款が制定され、時の皇后が名誉総裁に就任することが決定。同27年には皇族を名誉副総裁に推戴することが定められた。
現在、日本赤十字社の活動は「災害救護・国際活動・救急法等講習・青少年赤十字・赤十字奉仕団等」「医療事業」「看護師等の教育」「社会福祉事業」「血液事業」に広がっており、皇室はすべての事業分野にかかわっている。
なお、令和6年4月から愛子内親王殿下が日本赤十字社本社で勤務されている。平成18年から同24年まで瑶子女王殿下も勤務されていた。

病院建設のために土地をご下賜
現在、日本赤十字社は全国で91の病院を運営しているが、最初の病院は明治19年(1886)に東京の飯田橋に設立した博愛社病院である(現在の日本赤十字社医療センター)。同24年に飯田橋から現在の渋谷に移転開院した際には、明治天皇と昭憲皇太后が建築費を8万円贈賜されるとともに、建設地として3016坪余の土地を下賜された。
赤十字病院へのご支援は今も変わりなく、名誉総裁をお務めの妃殿下方は地方の赤十字大会に臨席された折々に、その地域の赤十字病院を訪問されている。
赤十字大会とは、赤十字の活動に著しく功績のあった個人や団体を顕彰し、さらなる赤十字事業の普及を目指すもので、各都道府県や地域で開催されている。例年5月には全国赤十字大会が開催され、式典では名誉総裁の皇后陛下が功績者らの代表に赤十字有功賞を授与される。
また、2年に1度、世界で看護活動に顕著な功労のある人を赤十字国際委員会が顕彰するフローレンス・ナイチンゲール記章授与式でも、皇后陛下が章記と記章を授与される。
香淳皇后による「献血のうた」
赤十字の献血事業は昭和27年(1952)に始まった。皇室では当初より献血の普及に尽力し、皇族方も率先して献血された。なかでも心を寄せられたのが昭和天皇と香淳皇后で、昭和35年、名誉総裁の香淳皇后は「献血のうた」を下賜された。このお歌は、献血運動推進全国大会において今も歌い継がれている。
献血運動推進全国大会は昭和40年から開催されており、平成の御代(みよ)の間は皇太子・同妃両殿下時代の天皇・皇后両陛下が臨席されていた。令和への御代代わり後は秋篠宮妃殿下がお出ましになっている。
平成元年には昭和天皇のご遺金が献血事業振興のために下賜され、「昭和天皇記念血液事業基金」が設立された。この基金では、血液事業に貢献のあった個人・団体に対して昭和天皇記念献血推進賞と昭和天皇記念学術賞を制定しており、毎年の献血運動推進全国大会で授与される。

世界を照らし続ける昭憲皇太后基金
昭憲皇太后は、そのご生涯を通して赤十字の活動を導き、支えられた。
明治21年(1888)、磐梯山が噴火した際には赤十字に医師の派遣をご指示。この派遣は、戦時下ではなく平時の際の救護活動として各国赤十字社に先駆けたもので、今に至る災害救助活動の嚆矢(こうし)となった。
明治45年(1912)、アメリカのワシントンで開催された第9回赤十字国際会議では、各国赤十字社の平時事業に10万円(現在の価値で3億5千万円相当)を寄付。この基金は『昭憲皇太后基金』と名付けられ、現在も皇太后のご命日にあたる4月11日に基金の利子が各国の赤十字社に配分される。これまでの配分は1921年(大正10)の第1回から2022年の第101回までで累計20億円相当となり、配分先は170の国と地域にのぼっている。
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