読みもの

和の響き――日本の音色に魅せられて

第2回 篳篥ーその9
令和7年12月3日
9 セメの話

音色を左右するセメ
 続いて、「セメ」(世目、責)の作り方を実演していただきました。先ほどから何度も話に出てくるセメです。



 セメとは、ダブルリードの開き具合を固定するパーツです。小さな輪っか状のもので、リードの先端部分にセメ止めまで入れて使用します。とても小さいものですが、篳篥の音色を左右する非常に重要な存在で、新屋さんは「セメがないと締まりのない音になる」と話します。
 ここで新屋さんがセメのあるリードとセメのないリードの音を聴かせてくれました。素人の私が聴いても、セメのあるリードのほうが芯のある音を出しているとわかります。
 セメの素材は籐です。以下、簡単に説明しましょう。

① 丸太状の籐を7センチほどに切って縦に四分割
② その後、内側の部分を削って細く平らな板状にし、幅や切り口などを整え、緩やかなかまぼこ型にする
③ 刃物の持ち手の部分を押し当てて、中の空気を押し出すようにしごく



④ 中央部にV字の切り口を入れ、そこから折り曲げて輪っかにしていく
⑤ リードの先が入るように丸い輪っかを作る
⑥ 輪っかの端に糸通しのための溝を入れ、そこに赤い糸を巻いて固定する



 新屋さんの手にかかると、本当にあっという間にセメが一つ完成しました。
「篳篥にはこういう細かい工程が多いんですよ。僕は細かい作業が苦にならないけれど、苦手な人は大変でしょうね」
 セメも消耗品です。新屋さんはいろいろなセメを常に用意しているそうで、新屋さんがまた後ろの棚から取りだした小箱には、たくさんのセメが入っていました。わずかな違いではありますが、太さも厚みもいろいろです。
「セメで音がずいぶん変わるんです。だから篳篥の鳴りが悪いと思ったら、まずはセメを変えてみるんですよ」



 固いリードに太いセメを着けると息が通らなくなるから、固いリードには細いセメを着けるなど、いろいろなコツがあるそうです。
 管本体とリードとセメの組み合わせによって、音色がさまざまに変わるわけですね。
「簡単に言えば、リードの調整は管とリード、音色とか響きといったプラスアルファの部分をセメで調節する感じですかね」
(次回更新:12月10日掲載予定 取材・文/岡田尚子)

第8回(前回)https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100730
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第1回 https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100723


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